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「風の道」11号(東京都)その1 小説創りのツボを心得た秀逸は大森盛和「K子の失踪」、間島康子「雨女ー一葉の恋その2」は作者の詩人気質が見事に一葉の心象を盛り上げる渾身の作風で先行き注目

 投稿者:根保孝栄・石塚邦男  投稿日:2019年 7月28日(日)09時58分23秒
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  ・編集後記を読むと、この雑誌は葉山修平と縁が深いらしいことが分かる。
昭和三十年代、学生同人誌をやっていた頃、「文学界」「群像」「新潮」などの文芸誌を
むさぼり読む時期があった。新刊は買えないので二、三ヶ月遅れの雑誌を古本屋で十円で買読んだものである。早く読みたい注目の作品は区立図書館や大学の図書館で読んだもの。
大江健三郎「叫び声」は「群像」であったか、島尾敏雄の「出発はついに訪れず」も「群像」であったか・・。そんな文芸誌のなかに葉山修平の作品があった記憶がある。

・今号から会員も一挙に増えて、旧会員の作品も力の入った作品が目立ち、新顔の参加により一段高く活性化してきたようで、会員の意欲も高まって行くことと期待したい。

・敷香高子「春光」は、モモの祖父と結婚した私の目線から、バングラデッシュ人を父親に持つモモという女の子との生活を描写している作品。高校を卒業したモモは東京の専門学校に進学することになった。君子蘭にカタツムリが付いていたことから説き起こしている何気ない場面がいい。7、8枚のショート・ショートの小品だが味がある。20、30枚ほどにしたい作品である。祖父のジジの表情がいい。

・大森盛和「K子の失踪」は、昔、主人公の私が中学校の教師をしていたころ教え子の女友だちであったK子がいつからか一人で遊びに来るようになっていた。そのK子が大学に進学するようになっていた。私はいつも奈落に無限に落ちていく夢に悩まされていた。その日も悪夢から目覚めると、雨戸を叩く音がしていた。K子が立っていて「誕生日のプレゼントです」と2匹の金魚の入った金魚鉢を置いて行った。

 その金魚を見た日から嘘のように悪夢を見なくなった。私は毎日金魚鉢の水を取り替えて大切に飼い続けた。ある暑い日、帰宅し金魚鉢を見ると2匹とも腹を上にして死んでいた。しばらくしてやって来たK子は、「2週間も生きていたら良いなって思っていたんです。それが2か月も生きたんですから、お手間をとらせました」といって、庭の金魚の墓に手を合わせた。そんなK子のことが半世紀経ってもなぜか忘れられない。

 それから半世紀が過ぎた今、生活習慣病の治療のため、毎日江戸川の土手を歩く日課。遠く富士山が遠望できる。その富士山で、K子は昔、アルバイトすることになり、私のところに訪ねてくることがなくなって寂しい想いをしたことを思い出す。私は死ぬまでに富士山登山をしないのは情けないことだと、登山を決意する。それは、K子が去ってから奈落に堕ち続ける夢を再び見るようになっていたこととも結びついていた・・。

 奈落の夢とK子のくれた金魚鉢を暗喩的な小道具に使うところなどなかなかである。さらにこの作品におけるK子のアルバイト先の富士山のこの作品における象徴性の持つ意味など、二重三重の暗喩的手法を使うところは並みの作家ができる技巧ではない。この登山しようと決心する老年の男の心情が、影絵のように描かれた小説創りの巧みな秀逸であった。平凡な素材を見事に料理していく小説創りのコツを知っているかなりの書き手である。

 この小説がなぜ巧みなのかを読み取れる者なら、相当の小説づくりを知っている書き手であろう。この作者は、小説創りの技術に関してだけ言えば、葉山修平より上である。ただ、読者は思うだろう。妻子ある教師がK子に対し、男としてどのような深い感情を抱いていたのだろうと、主人公の口からはっきりと語らせてみたくなるにちがいない。

 だが、それをリアルな場面としてや心象小説としてあからさまに描くのではなく、喩法のうちに暗示する手法を選択したところが、この作者の優れた小説作法なのである。

・間島康子「雨女ー一葉の恋 その2」は前号に続く樋口一葉を主人公にした小説であるが、特に半井桃水との恋愛に絞ったところが特異。意識的に柔らかな文章で綴っている文体が内容に溶け込んでいて、作者の詩人資質が内容にふさわしい抒情を盛り上げ、作者の並々ならぬ思い入れが読者に伝わってくるのがいい。作者が全力を傾注しているのが秀麗な文体で判別できる。この稿で30枚の力作になっているが、完成すると、これまでにない反響を呼びそうな気配で先行き注目である。


 ・仕組まれし心象の景見事なる作品読みきシュールリアリズム 石塚 邦男

 ・一葉のけなげな心の翳映す静けき雨の日作品読みき

 郵便ー116-0003 荒川区南千住8-3-1-1105 吉田方
                 「風の道同人会」

          電話ー03-3806-4715

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