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「響」25号(苫小牧市) センスある礎もとい「スピリッツ」、青木円香「クジラの背中」の暗喩が生きている作品、なかい弘士「流送夫」は力作だが・・

 投稿者:根保孝栄・石塚邦男  投稿日:2019年 8月14日(水)12時30分25秒
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  ・年一回発刊、毎月例会を開き文学について勉強会を持っている。同人誌というよりも勉強会に重きを置く会員同士の親睦に重点を置いているようだ。ゆえに、会員が全力を傾けた作品を同人誌に発表する、という意識は弱いようである。小説は一応9編だが、力を込めて形になっている作品は1、2編のみ。

・なかい弘士「流送夫」は、山の木を切り倒して川の流れを利用して木材を運ぶ仕事を生業としている者のことらしい。富山県の庄川界隈で山仕事についていた一家のルーツの話から説き起こす。明治初期のころの話の意欲作。鵡川町や穂別町史を参考にして重厚な作風になっているが、やや筆筋が旧いリアリズム手法なのが気になるにしても100枚近い力作を書き切ったエネルギーには敬服する。このたび「文芸思潮」の「銀河文学賞」の候補になるなど、重厚なリアリズム描写の作風が評価されたのは慶賀の至りである。

 だが、あえて苦言を呈すると、自然描写、人物描写にしても一本調子のリアリズムではなく、緩急をつけたセンスあるモダンなリアリズム文体を身に着けたい。例えば、場面に合わせて、単文、複文、重文の効率的な文体の使用を意識的に使い分ける描写技術を鍛錬したいものである。一本調子のリアリズム文体は、素人染みた悪い癖である。これが克服できれば、作家として一方の旗を立てる身に成長できるだろう。

・青木円香「クジラの背中」は、幼年期友だちであった女の子同士が、幼少女期の苛め体験、高校、大学生活と友達として成長、私は結婚し小説を書くようになる。私とSの二人は、それぞれ精神的な成長を遂げて来た幼友人なのだ。過激に怒りがこみあげて暴走しそうな私に比べ、Sはいつも冷静であったのだが、大地震で突然亡くなり・・という結末なのだが、作者は鎮魂の意味合いをこめた作品なのだろう。全体として、私小説的手法の作品の色合いといえようか。題名の「クジラ」の比喩的意味が、小説世界の想いをを深めている暗喩的小説であるところが買える作品である。

・礎もとい「スピリッツ」は、酒屋の内部、商店街の様子などの描写が的確で巧い。文体も単文主体でテンポが良いのも切れがあって新鮮。会話のやりとりもセンスがいいので人物が生き生きとして映像的。ちょっと読んだだけで、なかなかの書き手であることが分かる。ショート・ショートではもったいない。起承転結をしっかりつけた30枚ほどに仕立てると、目に止まる作品になるだろう。


・高岡啓次郎「唇紋」は、同じ保険会社に勤めている41歳の主人公は娘と暮らす独身男の主人公。32歳の明菜と男と女の関係で付き合っている。娘が大きくなるまで一緒にはなれないと了解しているふたりなのだが・・。品川のホテルに入った主人公は明菜を迎えて男と女の時間を持つところから始まる。明菜の残した「唇紋」の意味合いをクローズアップしたテクニック短編小説は形になっていた。二人称小説の手法を選択したところも新鮮。

・野沢透子「私の罪」は、外に愛人を作っている亭主に包丁を突き立てたが、やりそこなった妻。亭主はそのことを表ざたにせず、血だらけのまま長男を呼び出して穏便に済まそうとする。私は殺意があったことを認めてほしいのだが、夫婦喧嘩の過失として無罪放免されてしまう。ショート・ショートなのはもったいない素材で、2、30枚にはしたい素材。女主人公が事件の次第とその心理状態を物語る手法を選択したのも、この種の作品には効果的だろう。

・赤松亜美「こんにちは、フィリピン」。樺太で警官をしていた祖父は、敗戦で日本人が皆引き揚げるまで現地にとどまり治安を護る仕事をしていたので、進駐して来たソ連兵に捕らえられシベリア極東で強制労働につき、日本に引き揚げて来たのは戦後四年もたっていた。そんな祖父は突然凶暴な性格になる精神的病に罹っていた。子供の母はそんな祖父が怖ろしく、カトリック教会の神父に救いを求めたという。私は、教会の人たちとフイリピンにボランティアの旅にでる・・・という話なのだが、この作品は前半の祖父と母の話を中心に持って来ると数段よい小説になったろう。フィリピン旅行の場面はエッセイにまとめて切り離した方が良い。小説になるものとならない素材があるものである。小説の出来は料理の仕方で違いがでるものである。
 ・一首献上


  ・書きとめし物の語りの背景に揺るるは夏の花影ばかり  石塚 邦男

  053-0047 苫小牧市泉町1-3-16 榎戸克美方 「いずみ同人会」

       電話ー0144-35-0234

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