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「文芸思潮」2019夏号の編集後記が示唆的 だが、本当に文学は衰退しているのか?

 投稿者:根保孝栄・石塚邦男  投稿日:2019年 8月18日(日)01時20分33秒
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  ・編集後記に編集・発行人の五十嵐勉さんが次のような示唆的な言葉を記していたので引用してみる。

・1970年代に、三島由紀夫が自殺し、それに代わるようにして中上健次と村上龍が登場して以来、日本文学は2つの流れに分かれた。一つは中上健次が代表する伝統的なリアリズムの文学、もう一つは 村上龍が代表する、軽いポップス調の現代色を流していく文学である。村上春樹などによって前者はしだいに後者に押され、中上健次によってかろうじてその流れを保っていた伝統派は、やがて彼の死によって、その勢いを失っていく。

・九十年代以降の日本文学の衰退は、リアリズム派の喪失によるところが大きい。時を同じくしてパソコンの普及により、バーチャルリアリズムの台頭とその浸透に伴って、リアリズムはいっそう場を狭め追いやられて、主流の立場を失うどころか、息絶え絶えの様である。

・一方現代の問題は、問題の巨大化、深刻化に反比例し、安全と便利さの影に覆われてしまって、リアリズムによる掘削がさらにしにくくなっている。それは活字離れを含めて文学そのものの衰退と結びついているように見える。

・翻って考えてみれば、このままでいいのかという疑問が頭をもたげてくる。やはりいくら蟷螂の斧であっても、問題を真っ直ぐ見る眼、命としての人生や世界や人間を深く見つめる眼を喪失することは、最も重要な根を失っていくことになるだろう。この復権をめざして努力することは、人間の根を守ることに繋がっていることをあらためて振り返りたい。


・・・//以上の文学状況の分析は、よく理解できるし、一面ではなるほどとも思えるが、
問題は<リアリズム手法の復権>でひとくくりできるほど単純ではない。大まかにリアリズム復権といっても、問題はリアリズムの質、内容である。同じリアリズムでも、旧式リアリズムではダメだろう。新しいリアリズムの表現、それがなくては新しい文学の視野は拓くことができないし現代の読者の共感も得られないだろう。
 そんなことよりも、改めて文学におけるリアリズムとは何か、あるいは、<文学におけるリアリティとは何か>を確認することが先決のように思うのだが、どうだろう。

・・・//それは音楽を例にとると理解が早い。先人が開拓した音楽をなぞるだけでは、物真似であり、同じリアリズムでも、単なる復古調リアリズムではダメだ。ここで時代の読者が望んでいるものの変化の実体についても、もう一歩深く分析する必要があるだろう。作者や読者は、いつの時代も、復古調を懐かしむが、単なる復古では満足しないものだ。<安全と便利さ>の現代をリアリズム手法で描くのもリアリズム文学であることを、我々は忘れてはならない。そして、そのリアリズム手法は、旧来のリアリズムではなく、現代のリアリズム手法でなくてはならないのは必然である。

・・・//時代の潮流に逆行するだけでは共感されないだろう。復古調のリアリズムでは、作家として立ってはいけないだろうし、読者も振り向いてくれないだろう。同じリアリズム手法であっても、新しい時代のリアリズム手法の作家でなくては、現代性を獲得できないだろう。となれば、しょせん<文学>は個の世界を掘削する以外になく、時代の潮流がどうあろうと、作者は己を信じるリアリズム手法を開拓する以外にない。

・・・//ここで、<純粋文学><純文学>という昔ながらの仕分け世界が浮かび上がる。
しょせん<本物の文学>は、<少数の読者>を相手に生まれ、書かれるものでありつづけるだけであり、文学は、社会的にはそれだけの意味しか持たないということだろう。あるいは、だからこそ文学は、人類にとって大切で貴重なものとも言える。

///・・・社会風俗がどう変わろうとも、あるいはテーマ、モチーフが何であれ、哀しいかな、現代に生きる作家は現代の諸要素を書き続ける以外にない存在だ。それでしか、自分の存在理由を見いだせないのが作家だからだ。社会が軽くなり、醜く変わったから、昔の良き時代のスタイルに還るのではなく、醜く変わった現代を新しい視点で、新しい表現方法で凝視するのが現代に生きる作家の使命であり、存在価値であるだろう。

・・・//1972年に、私は北海道苫小牧市で、「かざはな」という同人誌を企画創刊したとき、「あなたが最近読んで感動した本は?」というアンケートを行った。このときに皆さんが答えた内容を見て驚いた。こう言っては失礼かもしれないが、その辺の若い女の子やビジネスマンが、意外にも難しい純文学作品を愛読?または読もうと努力している実態が浮かび上がっていたのである。以下に紹介。

・19歳女学生ー「20歳の原点」高野悦子
・20歳女性事務員「火垂の墓」野坂昭如
・20歳女性事務員「されどわれらが日々」「贈る言葉」柴田翔
・20歳女性事務員「見知らぬ顔」船山馨、「充たされた生活」石川達三、「ファンキー・ ジャンプ」
・32歳主婦「高村光太郎詩集」
・20歳学生「現代のアナキズム」ダニエルゲラン
・24歳女性事務員「マルテの手記」リルケ
・19歳学生「イワン・デニーソビッチの一日」ソルジェニツイン
・20歳事務員「近代俳優術」千田是也
・23歳女性事務員「豊饒の海」三島由紀夫
・41歳会社員「エンゲルスの追憶」ベーベル・メーリング
・22歳女性事務員「叫び声」大江健三郎
・21歳女性事務員「お登勢」船山馨
・20歳女性事務員「ユリイカ」雑誌
・40歳会社員「アイヌ神謡集」知里幸恵

・以上のようなものであるが、物書きでもない普通の人たちが、意外にも難しいものを読んでいる、あるいは読もうとしていることがこれで理解できたものである。当時は70年安保騒動のあとで、若者が政治的に先鋭化した時代で、そんなことがここにも反映しているのだろう。きわめて真面目な読書傾向であった。

・それでは、現代の若者にこのようなアンケート調査したなら、結果はどうであろうか?
少なくとも、真面目な作品、作家の一人、二人は挙げるであろう。読もうとして買い入れる大切な一冊、結果として読まずに本棚の隙間を埋める役目しかなくても、大切な一冊は誰しもあるようである。一首献上・・。

  ・大切な一冊位はあるものよ享楽世界の若者にさへ  石塚 邦男



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